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水爆実験で消えた村

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カブデンさん
サルジャー村に住む元KGBのカブデンさん。彼だけが事件の事を知っている。
 この時の水爆開発の責任者であったアンドレイ・サハロフ博士の回想録 (邦訳は「サハロフ回想録」読売新聞社刊)には放射能汚染や住民たちへの被害をやむを得ない犠牲だと いってはばからない軍人たちとのやり取りが語られている。

 急きょ、風下地域の被曝線量が計算され、住民を避難させなければならない地域が割りだされた。 実験の最高責任者アレキサンドル・ワシレフスキー元帥に対し、住民避難の上申がなされた。しかし彼は サハロフ博士ら科学者に対し、こう語ったという。

「あなた方は何も良心の呵責を感ずることはない。軍の作戦にはいつも犠牲がつきもので、20人から30人の 犠牲者がでるのが普通だ」「心配するな。・・・カザフ人の子どものことは心配ない。昔物語になるよ」

 何も知らされずその日を迎えたコルフォーズ・タイランの人々は、 これまでのとはケタはずれに大きなキノコ雲をどんな気持ちで見たのであろうか。

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