写真展挨拶文
私は1998年以後イラクの子どもたちを取材してきた。イラクでは、湾岸戦争後、白血病、ガン、奇形などが多発し、病院は子どもたちであふれかえっている。急増する子どもたちの白血病に対応するため93年にはバクダッドの二つの小児病院に白血病専門病棟ができた。しかし、経済制裁の影響で、病院には医薬品が不足し、医師たちは溢れ来る重症患者に手の施しようもない。こうした異変の原因は湾岸戦争時、米英軍が使った劣化ウラン弾によるものだと考えられている。
劣化ウランは核燃料や核兵器用のウランの濃縮過程で出る、放射性廃棄物である。硬くて重い性質に目をつけた兵器産業は砲弾として開発した。高速で標的に激突すると、その衝撃と発熱で激しく燃焼し、微粒子となり、大気や土壌、水を汚染する。体内に入れば金属毒と相まって、ガン、白血病、肝臓や腎臓障害、腫瘍、奇形児出産などが発生する。
湾岸戦争で300トン以上の劣化ウラン弾が使用されたという。広島に落とされた原爆の1万4千倍から3万6千倍の放射能原子がまかれたことになる。ボスニア、コソボでも使われ、アフガニスタンでも使われた可能性が強い。今後も、繰り返し劣化ウラン弾を使用すれば、地球環境と人類の未来に取り返しのつかない危険をもたらす。イラクの子どもたちは、人類の未来に警鐘を鳴らしている。
森住 卓
(プロフィール)
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